毎年初夏の7月に、
国税庁から路線価が公表されます。
近畿2府4県で一番高い路線価は、阪急うめだ本店前でした、とニュースが流れてくるのを聞いたことがある方は、多いのではないでしょうか。
ときどき耳にするこの路線価とは何でしょうか。
土地の値段と関係することはわかるけど、いまいちピンとこないと思われる方も少なくないと思います。
簡単に説明すれば、相続税と贈与税の申告するときに、土地を評価するために利用されるものが路線価です。
なんだか、わかったような、よくわからない説明ですね。
視点を変えてみましょう。
なぜ、路線価は、必要なのでしょうか。
そもそも相続税は、遺産をもとにした金額に税率をかけて計算されます。
相続税を計算するには、税率をかける前に、遺産のすべてを金額に換算する必要があります。
遺産はおおよそ、土地や建物の不動産、株式、現金、預金で構成されます。
現金であれば、数えれば、金額を確認できます。
預金であれば、通帳の残高を見れば、金額を確認できます。
株であれば、検索すれば、株価という金額を確認できます。
しかし、土地は、どうでしょうか。
土地には、金額が表示されていません。
そこで登場するのが路線価です。
路線価を使って土地を評価して、土地を金額に換算します。
路線、つまり道路に単価がついているので、路線価と呼ばれています。
路線価は、千円単位の㎡単価で表現されます。
265は、この路線沿いの土地の1㎡あたりの価格が、26万5千円であることを表しています。
仮に、土地の面積が100㎡の場合、その評価額は
26万5千円 × 100㎡ = 2,650万円 となります。
相続税の実務上、土地は路線価を使って評価されています。
一方、法律では原則として、相続財産は、時価で評価するとされています。
では、路線価で評価した土地の金額は、時価でしょうか。
その評価額は、時価ではありません。
路線価は、時価を目安に、保守的につけられています。
路線価は、時価よりおおよそ2割ほど低くなるように設定されています。
よくある説明が、路線価は、その年の1月1日時点での価格であり、年の途中で土地の価格が下がっても、路線価が時価を上回らないように、時価より低くつけられている、というものです。
実際、路線価図を作成していた身としては、
路線価は、時価を上回らないという点が、一番のポイントでした。
個人的な意見ですが、路線価は、時価を超えてはならない、これが路線価をつける際の絶対的な不文律だと思っていました。
もし時価を超えてしまうと、時価で評価すると法律が言っているのに、路線価が時価より高いとは、どういうことだと申告する人達から苦情が殺到して、収拾がつかなくなることは、想像に難くないでしょう。
もちろんそうなった場合は、苦情だけではなく、不服申立や裁判が続出して、大混乱になることは確実でしょう。
そんなわけで、路線価は時価ではないけど、むしろ時価より低いけど、
相続税の申告をするとき、路線価で土地評価すれば、
法令上、時価評価したものとして扱われます。
さらに、細長い土地、入口が狭い土地、形が歪な土地は、評価額を減額できます。
だから、わざわざ土地を個別に時価評価して申告する人は、ほぼいません。
法令に則って評価するだけで、時価より低くなって、断然おトクだからです。
こういった事情もあって、
相続税を申告する上で、路線価は、避けては通れない問題です。
それなのに、概念が独特で、とっつきにくいため、相続税の申告書を作成するときの最大の難所となります。
実際、税務署の職員でも、土地評価は苦手という人は、少なくありません。
必要なのに、わかりづらい、それが路線価と相続税の土地評価なのです。